Once upon a time

秋の夜長に思うこと 1 ~スーザン~

急に朝晩は涼しくなってきて、あっという間に暗くなりますね。
朝も7時ちょっと前に家を出るんですが、まだ真っ暗ですよ。

大学の初日、取った講義の受けられる場所とスケジュール表をもらう為の列に、オリエンテーションの終わった後ならんでいると、私の列の何人か前にサムライ風に肩くらいまでのブロンドを無造作に結わいた人がひとり並んでいました。 
雨が降っていて結構肌寒い日で、その人は着古したウィンドブレーカーみたいな上着を着ているのに、下は短パン。 肩に背負った染みだらけの古めかしいバックパックに教科書らしいものが目いっぱい詰め込まれていて、今にも破れそうでした。 
私は列に並んで待っている時間をただ人観察に使っていただけなのでその人にも声をかけるような理由はなくて、本当にバックパックが破れるんじゃないかと見ているだけでした。

同日の数時間後、初日のスペイン語のクラスで適当に席を見つけて座ったところで顔を上げると、同じく講義を受けるために入ってきた数人のグループの後ろから、その日の朝見かけたブロンド侍が入ってきて、私のすぐ斜め前に座りました。  
窓から差し込んできた雨上がりの日の光に反射して見えたその人のスネ毛を見て、私はやっとその中性的な顔立ちの人を小柄な男の人だと認識しました。 彼は、授業中も一言も声を発することはなく、講義は普通に始まり終わって、私はランチを食べに学食に向かいました。  知り合いもいないので、1人で自分が作って持ってきたサンドウィッチを食べていると、「Hi!スペイン語で一緒ね」と、声をかけられました。  
とっさに声の方を振り向くと、そこに立っていたのは色あせた上着を邪魔そうにウェストに巻きつけたあのブロンドが笑顔で立っていました。 人懐っこそうな笑顔につられて、

「女だったんだね。 男かと思ったよ」

思わずそう言いそうになるのを抑えながらとりあえず「Hi!」と答えた私に、右手を差し出しながら、彼女は自分の名前を名乗りました。 
田舎の学校ということで外国人が少ないからか(後で外国人は結構いることがわかったけど)、受付の人から始まって、私の名前を聞くたびに正しく発音しようとする前に諦めている人が多かったのですが、彼女はゆっくり確認するように私の名前を正しく発音して、それから一度も間違えることはありませんでした。







4つ年上の彼女は、なんと実家のある北カリフォルニアから6ヶ月以上かけて、大学に通うためにひとりで自転車で東海岸側に来たのでした。
聞いてみると、彼女の住むボロアパート(というか、長期労働者用の貸し部屋:キッチンなし)は私のボロアパートのすぐ近く。 私は車を持っていたので、自転車で片道1時間半かけ通う彼女とは、それからは雨の日に限り私の車で学校の行き帰りを共にするようになりました。

当時の彼女の全財産は、自転車と、野宿用の携帯テントとズタ袋一杯分くらいの洋服だけ。 
同じ服を1週間も平気で着ていることもありました。 菜食主義という以外にもいろいろ健康と環境保護に基づいた彼女なりの信念(と懐具合w)で、お昼は、有機自家栽培をしているというちょっと怪しい人から物々交換でもらったアルファルファというかい割れ大根をよわっちくした感じの植物と、豆類とライ麦パンだけのことがほとんどでした。 
お金のある日は学食のハンバーガーも食べる私のことを顔をしかめて気持ち悪がっていましたが、一度その彼女のかい割れにまだ土がちょっと残ったままサンドウィッチにされてるのを見て私がここぞとばかりにからかうと、「アンタがいつも食べてる毒と比べたら、土の方がよっぽど身体にいいのよ」なんて平気で食べてしまいました。
彼女が壊れた電球を買い換えるお金までケチって、ろうそくの火で生活していた頃は、私のアパートによく遊びに来ました。 私もTVもないようなところで暮らしていたので、にわか哲学者の彼女のインテリうんちくを聞いたり、これからの人生のユメを語り合ったりしたものでした。


「証券の勉強をやれるだけやって、大学院まで出られたらNYに行こうかな。 東京で知り合った人が証券マンで、NY支部に転勤してくるんだよね。」

バブル完全崩壊の直前か直後くらいの時期の、私の将来のありきたりな「予定」でした。

「証券なんて、社会が造り出した妄想の産物に踊らされるのが好みなの? 今の経済社会の秩序が崩れたら即食いっぱくれそうね」

頭の良い彼女にはいつも言い負かされっぱなしでしたが、不思議とそれほどイヤだと思ったことはありませんでした。 彼女の洞察力とか、個性、率直な表現の仕方が刺激的で面白くて、彼女と過ごす時間はあっという間に過ぎました。

「私はね、まず大学院でしょ。 ずいぶん寄り道しちゃったから、結構な年になってそうだけどね。 在学中にプロの作家になれなくてもいいから、出版できるような本を書きたいわ。 中国で「仙人」と呼ばれる人の下で、彼らと同じ暮らしをしてみたい。 人間の極限を知りたいの。」

私がこうして書くと、なんとも薄っぺらに聞こえてしまうけど、彼女の言葉にはとても説得力があって、きっとひとつひとつ全部成し遂げていけそうな、そんな期待を聞いている方にも抱かせました。

「NYで仕事をして、そのうち知り合った誰かと結婚して、子供は、、、2人か3人は欲しいかな。 でも仕事は続けていきたいのよね。」

「その調子じゃ、そのユメの結婚も2,3回はできそうじゃない? 私は結婚はしない。 昔は結婚制度なんてなかったから、浮気もなかったし、痴話で揉めることなんてなかったのよね。 もっと大事なことが昔はたくさんあったんだもの。 だいたい生まれる時も死ぬ時も1人なのに、その間だけ赤の他人と暮らすなんて、不自然すぎるし。 妊娠出産なんて、今の世の中は人間で溢れているのにこれ以上人口増加に拍車をかけてどうするの」

「えーそうかな…。 でもやっぱり家庭は持ちたいよ。 いつかは。 自分の子供も欲しいし、赤ちゃんも産んでみたい。 好きな人ができれば結婚だってしたいな。 スーは最後はどうするの? 全部やり終わって、満足したら」

「やりたいことを全部やり終えるなんて、そんなおめでたいことがあるとするなら、後はさっさと死ぬわよ。 森の中かどっかに行って、掘った穴に寝転がっていれば、私だっていつかはくたばるでしょ。 そしたら腐った死体は草木の肥料となったり、虫や動物の餌くらいにはなるものね。 それで私も微力ながら少しは地球に恩返しができるってもんよ」

「ホントに!?」  

「そ! 本当に。」

ビールが好きでお金があればビールを飲み、「思考能力を高めることができるのよ。 飛べない鳥でも飛べるみたいに」そう言って、ドラッグもたしなみ程度に使用していた彼女でしたが、初めて誘われた時に、「これで警察沙汰にでもなったら私は日本に帰されてしまうのよ」と私が断ると、それてからは2度とそれを話題にすることも、ドラッグを私の住まいに持ち込むこともしませんでした。  シェルターに行って、自分より立派な身なりの(笑)ホームレスの方や低所得のご老人に食べ物をふるまうボランティアをやっていた彼女に誘われるままについていったりして、自分とは無関係だと思っていたそういう世界を見せられて、自然と世の中の仕組みや本当の「Give & Take」の意味を私はその頃学びました。

続き♪
[PR]
by 4x4T | 2005-10-03 13:14 | 今日の出来事
<< 秋の夜長に思うこと 2  ~ス... 芸能人占い >>



働く主婦です。        毎日がんばってます。     どうぞよろしくv
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31
カテゴリ
以前の記事
私のお気に入りリンクv
私が毎日のようにお邪魔してしまうお気に入り♪  管理人の方々それぞれとっても個性的で楽しいです。


◇ワルシャワうわの空
~お弁当編~


◇Mother Leaf

◇ハナウタ

SUNNY SIDE UP*CAFE

脱サラ研究員の妻ラン子の生活

◇☆☆ 結婚します! ☆☆

息子+双子娘 育児日記2.0

サウスキャロライナ・クロニクルII

◇Pink☆frog
tomokerockの今日もしあわせ


◇mon petit cochon

◇Oh! My GodS!

MAIL 使用一時停止
お気に入りじゃないんだけど^^;
ご用の方はこちらまで。 
連絡用にでもお使いくださいv


最新のトラックバック
regis univer..
from regis university
effects peri..
from effects periac..
lulu ffx
from lulu ffx
golf shipping
from golf shipping
jimmy eat wo..
from jimmy eat worl..
nylon stocki..
from nylon stocking..
summary of j..
from summary of jan..
url
from url
1 grader ide..
from 1 grader idea ..
anal big fuc..
from anal big fucki..
ライフログ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧