Once upon a time

千羽鶴の気持ち

ミドルスクールに通うようになった長女に新しい仲良しができました。
同じ学校に通う、ひとつ上の女の子。 そばかすにくるくる黒髪のポニーテイルのかわいい子。
遊びに来ても、私にも元気よくニコニコ話しかけてきます。
バスが同じで、娘の話では、その子、テイラーはバスの中でも人気者らしいです。

「人気者って、どうして人気者だと思うの?」

「だってね、みーんながテイラーと話したがるんだよ。 男の子も女の子も。 バスの中でずっとテイラーに話しかけてて、テイラーは『ちょっと待ってぇ。 いっぺんに話しかけたらわかんない』って言ってるの~笑」

今年ミドルスクールに入学した娘にバスで一緒に座ろうと言ってくれる様な知り合いがいなかった時期、いつも友達に囲まれた中心で楽しそうにしているテイラーが娘には眩しく見えていたようでした。

テイラーは、私たちの住んでいるところからそんなに離れていない場所に家があって、ある金曜日、トランポリンがあるという娘の話を聞いて彼女が遊びに来ることになりました。 

テイラーがウチに来る! 

新しい学校で、なかなか気の合うお友達を見つけられないで寂しい思いをしていた娘は大喜びでした。  もともとちょっとおてんばで、性格や趣味に共通点が多かったふたりは急激に仲良しになりました。  その日トランポリンで大騒ぎをして意気投合してからというもの、テイラーは小学校に通う4年生の妹も連れて、後ろに座席(3歳の弟用らしい)の付いたママちゃりでちょくちょく遊びに来るようになり、私たち夫婦もご両親と顔見知りになりました。  
バスに娘よりも先に乗るテイラーが娘の為に席を確保するようになったりして、娘は遠くから憧れのまなざしで見ているだけだったテイラーのバスの中での一番のお友達になったようでした。

先々週のことです。 子供達も寝静まったような時間に私がPCを弄っていると、突然娘が部屋に入ってきました。 泣いていて、そのまま私にかきついて来ました。 やっと落ち着いてから、よく話を聞いてみると、その日の下校のバスの中で、「誰にも言わないでね」とテイラーに打ち明けられたことがあったのです。

「テイラーのお母さんが乳がんで死ぬんだって。 これから手術したり入院したりするから、もう遊べないかもしれないって。 学校へも来れなくなるかもしれないんだって。 テイラーのお母さんは死んじゃうんだって。」

私と同年代だと思われるテイラーのお母さんを思い浮かべて私もその突然のニュースにショックを受けましたが、娘はベッドに横になってからいろいろ考えているうちに、私や夫だって、いつか急に病気になってしまうかもしれない、、、そんな想像が働いたようで、テイラーに同情する気持ちと同じくらい、それに怯えて泣いていたのでした。  

「ママが死んだら私たちはどうなるの? 学校にも行けなくなるの?」

静かな夜に娘の悲しい妄想はどんどん膨らんで、パニックになって泣く娘をなんとかなだめようとしながら、私は途方にくれていました。  とにかく娘の思考の方向を変えようと、私はもっと現実的なことを提案してみました。

「ママが病気になっても、あなたにちゃんと学校に行って欲しいと思うように、テイラーのご両親だってきっとテイラー達のこともちゃんと考えていると思うよ。 今は病気のことがわかったばっかりで、学校をお休みしたりすることもあるのかもしれないけど、きっと学校にもまた戻ってくるよ。 テイラーのお母さんが病院にいる時なんかは、子供達はここに来てもいいんだから。 ママもテイラーのお母さんとお父さんに話してみるけど、アナタも泣いてるだけじゃなくて悲しい思いをしているテイラーの力になってあげられること考えてみれば?」

娘の泣き顔は、私の予想通りにみるみる変わって何かを一生懸命考える表情になりました。  今晩はパパもいないし、ママと一緒に寝る?という私の提案にも首を横に振って、何十分後かにはすっかり落ち着いた娘は自分の寝室に戻っていきました。
やれやれ、ブログの更新もできなかったな (←こんなことろでさり気なく言い訳(・m・))
私もホッと一息ついてベッドに横になろうとしていると、ドアがまた細く開いて、娘が顔を覗かせました。 

また悲しくなったのか、それともやっぱり私と一緒に寝る気になったか。。。

ドアを開けた赤くなった目の娘の顔はすっかり晴れていて、私がまだ寝ていないのを確認すると、あれだけ泣いたからか、ちょっと恥ずかしそうに入ってきました。

「ママ、まだツルの折り方覚えてる?  私、テイラーにツルを折るから明日教えて」

娘は私の祖母が大きな手術をした時、私と一緒に折った千羽鶴(千羽もなかったけど)を覚えていたのでした。 晩ご飯の片づけを済ませた後、お風呂上りの娘と一緒に折った、ひぃおばあちゃんの千羽鶴。  

一羽一羽折るときに、相手の元気な顔を思い浮かべながら、元気になりますようにって願いながら折るんだよ。

そんな、私の思いつきの説明を娘は神妙な面持ちで聞きながら、祖母の緊急手術が終わって緊急治療室から普通の病室に移るまでの1週間ちょっと、私と毎夜ツルを折り続け、娘は自分のひぃおばあちゃんが無事に回復したのは千羽鶴のお陰だとみんなに自慢したものでした。 

「ちゃんと覚えてるよ。 じゃぁ、明日からやろうか」

満足そうに頷いて部屋を出て行った20分後に覗きに行くと、娘はすっかり夢の中でした。

それから、忙しすぎてどうしようもない日以外は毎夜、娘とキッチンのテーブルでツルを折りました。 おばあちゃんからの荷物に入っていた千代紙や、日本に去年帰ったときに親戚にもらった折り紙も使って、いろんな話をしながら、テイラーのお母さんの回復を願いながら折りました。

「テイラーは学校にもどってきたの?」

「うん。 やっぱり学校は休まなくてよくなったんだって。」

「お母さんの容態はどうなの?」

「ママ、そんなこと聞けないよー テイラーが悲しくなっちゃうでしょ。 でも元気だし、いつもみたいに笑ってるし、お母さんも元気になってるんじゃない?」


娘に「お母さんが死んでしまう」と打ち明けたテイラーが思っていたほど、奥さんの癌は進行していなかったのか。。。 どっちにしてもテイラーが元気だということは、あれ以来悪いニュースはないということなのだと思って、私も少し安心していたとき、スーパーで野菜を買っているテイラーのお母さんを見かけました。  どういう風に話しかけたらいいものか、ちょっと戸惑いながら、テイラーそっくりの黒い巻き髪を後ろでまとめた彼女の背中に声をかけました。





振り向いた彼女は、PTAの会合で会ったときと全然変わらず元気そうでした。

「あら、久しぶり~ この前ブルック(テイラーの妹)がアナタを学校で見たって言ってたわ。 どう? 仕事の方は。」

朗らかに話す彼女は、その後も今度あるベイクセールの話や、ガレージセールで買った時計の話を賑やかにして、私は病気のことを聞くきっかけがつかめません。

「もし、子供達をみる必要があるようならいつでも言ってね。 家も近いんだし、力になれることならなんでもするわよ」

「ありがとう。。。?」

やっとの思いできりだした話も、何となくかみ合わないような気がします。 その場で何となく変な気がするまま別れたあと、もう一度駐車場に出ようとしている彼女を見かけて、気を取り直して聞いてみました。

「うちの子がテイラーから聞いてるんだけど。 色々大変だと思うけど、できることがあったら遠慮なく言ってね。」

「…何を?」

「入院はしなくてもいいの? 無理はいけないだろうから、疲れたときとかはいつでも子供達をこっちによこしてもらっていいから。」

「何?」

「アナタの病気のこと。 テイラーからうちの娘が聞いたの。」

言ってはいけないことを言ってしまったのかと一瞬焦ってから、そうでもないことに気がつきました。

「テイラーから、あなたが乳がんだって聞いたのよ。」



その晩もお風呂上がりにいそいそと折り紙の入った箱を出してきた娘に、「大ニュースよ! テイラーのお母さん、乳がんじゃないんだって!」って言おうかどうしようかと迷いましたが、やっぱりもうちょっとこのままにしておこうと思い直しました。 最初はあんなに動揺していた娘も今はすっかり落ち着いて、友達を元気付ける方法をいろいろ考えたりしています。 テイラーのことだけじゃなく、学校であったことなんかを楽しそうに話す娘を見ながら、このツル達はこの先どうなるんだろう。。。そんなことを考えていました。

「いっぱい作ったからね。 もうそろそろあげることにしようかな。」

できたツルは204羽(娘調べ)。  糸で繋げた千羽鶴を誇らし気に眺める娘は、祖母の千羽鶴のときよりもずいぶん大きく、たくましくなっていました。 

守るばかりが私の役目じゃないのかな。

適切な対処の仕方を思いつけないでいる私の言い訳だったのかもしれません。 
それでも私はその後の成り行きを、娘とテイラーに託すことにしました。  

手書きの手紙も添えて、火曜日の朝、娘は袋に入った204羽の鶴と一緒に家を出ました。
その日の午後、私が用事を済ませて帰った時、すでに帰宅していた娘の靴の横に、千羽鶴が入ったままの袋がありました。

普段と変わらない様子でご飯を食べてお風呂に入った娘は、そろそろ寝る時間となった頃、お鍋を洗っていた私のいるキッチンに入ってきました。

「…ツルは渡さなかったの?」
「うん。」


「朝、バスではテイラーに会ったの?」
「そう。」
「…テイラー、なんて?」
「あのね、、、冗談だったんだって。 お母さんは乳がんなんかじゃないよって言ってた。」
「…そうだったの。 よかったね。」
「なんで?」
「だから、テイラーのお母さんが病気じゃなくてよかったね。」

お鍋はもうすっかりきれいになっていたけれど、蛇口から流れ出る水の音を聞きながら娘に背を向けていることで私は静かに話すことができました。

「あ、うん。 …でも冗談だって、気づかなかったよ。 本当だと思ってたから千羽鶴折ったのに…」
「せっかく折ったんだから、あげればよかったのに。 テイラー、千羽鶴のことなんか知らないでしょ? どういう意味があるのか、アナタがどうやって毎晩折ったか教えてあげればよかったのに。」
「…うん。 でも要らないって言ったから。」
「……じゃぁ、きれいだから、アナタのお部屋に飾れば?」
「うん。」

いつまでも何も言わない娘を振り返ると、娘はもう千羽鶴を持って二階に上がった後でした。
寝付いた頃様子を見に行った部屋には千羽鶴はありませんでした。


そして、それからは別にテイラーの話が話題に上ることもなく時間が過ぎました。  
今日、息子のサッカーで使うシンガードが壊れたので娘のお古を彼女の部屋で探していると、クローゼットの奥にタオルに包まれた千羽鶴がしまわれているのを見つけました。 私たちが少しずつ折った204羽の鶴の群れは本物の千羽の鶴よりもずっとちいさくて、色とりどりの羽を白いタオルの下から覗かせていました。 
冗談好きのテイラーは、火曜日以降も娘とは仲良しで、バスでもちゃんと席を確保してくれています。 金曜日の今日も、娘とトランポリンでさんざん遊んで私にも礼儀正しくきちんと挨拶して帰りました。

あの日彼女が娘に話したテイラーのお母さんの病気のことは、母親に似ておっちょこちょいの娘の早とちりだったのか、それともテイラーに何かもっと根深い問題があるのか。  
自分の母親が死ぬかも、、、そんなことを話して、それを心配している友達にあれはジョークだと言ってのける彼女の心境や、そもそもそんな悲しいことを思いつく理由をあれこれ考えつくほどの想像力は私にはありません。 
ただ、友達の身の上に起こった不幸を悲しみ泣いた夜や、2人で鶴を折った時の娘の気持ち、要らないと言われた鶴をタオルに包んでクローゼットにしまった娘の思いは、母親である私にはしっかり見える気がして、ちょっとやるせないような、でも誇らしい気持ちになりました。
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by 4x4T | 2005-10-15 11:09 | 独り言
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