Once upon a time

Millions of Peaches

私がまだ大学院に通っていた頃のことです。 

寒い冬のある日、論文の相談をよくさせてもらっていた教授に、夜間大学のクラスの講義を臨時で2週間だけ頼まれたことがありました。 自分も通ったことのある(同じ学校ではないですが)夜間大学なので、クラスの顔ぶれの予想はだいたいつきます。 いろんな理由でここに辿りついた学生達は、年齢、職業もまちまちです。 総勢30人弱の受講生。 金融関連の講義だったので、その当時の私にはピッタリ。 私はこの初体験を楽しみに準備していました。 

私は、子供の頃から怒られるのは案外平気な子供でした。 何を言われても心に響かないのではなくて、かなり厳しい口調の批判を受けたり、激しい議論になってもパニック起こさずに、相手の言おうとしていることを聞こうとする、ということです。 自分の意見ももちろん言わせてもらうけど、相手が言っていることも素直に考えてみようとするタイプだと思います。 
…こう書けば聞こえはいいですが、口答えばっかりの面倒くさいヤローだゼって思われるのかもw

少し緊張して教壇に立つ私の前に座った学生達の中に、1人中年の男性がいました。 彼は私の何が気に入らなかったのか、しょっぱなからあまり意味のない野次を入れてみたり、失礼なコメントを聞こえるようにつぶやいてみたり、そんないじわるを止めてくれません。 90分間の講義の間中続く彼の暴言を、平気な顔を装ってかわすのにヘトヘトに疲れてしまいました。 

講義の後も、私の講義の内容についてしつこく屁理屈を並べ立てて粘る彼の相手をしていて、予定していた時間よりずい分遅くやっと帰路につきました。
車内の時計の蛍光版を見ると、もう11時。
夫は次の日の朝6時には家を出なくてはなりません。 
4歳の娘と1歳になったばかりの息子はその頃私の添い寝で眠りにつくのが習慣でした。 
ご飯も、子供達のお風呂も何もせずに、すべて夫に任せて家を飛び出してきていたのを思い出しました。 
 

夫は怒っているかな?  
子供達は泣いているかな?

夫の疲れた顔や、子供達の泣き叫ぶ声、めちゃくちゃにちらかった部屋やキッチンが目に浮かぶと、胃がキリキリと痛んで、アクセルを踏む足に力が入りました。


ヒールの音を派手に響かせて、駐車場を走り抜け、その頃住んでいたアパートメントのドアの前にたどり着きました。 耳を済ませても、音は何にも聞こえません。 

……?

逆に心配になって、恐る恐る鍵を開けて中に入りました。





ドアのすぐ内側のリビングルームは、暖房が効いていてホッとするほど暖かくて、まだ電気が明るく点いていました。 
かたづいたじゅうたんの上にタオルケットが敷いてあり、ソファのクッションでバリケードされた真ん中で、息子がお座りして機嫌よく遊んでいて、入ってきた私を振り返って、ニカッと下の歯だけの笑顔を見せました。 

息子を抱っこして、奥のキッチンから聞こえる声を辿っていくと、私が帰ったことにまだ気づいていない娘と夫の背中が見えました。 
娘はシンクの前に置かれたイスの上に立って、隣のパパと一緒に何かしゃべりながら歌っています。  髪の毛は洗いっぱなしで乾いてしまったようでボサボサ。 変だと思ったら、私のTシャツをパジャマ代わりに着ていました。 その隣の夫はトランクス一丁…(ーー;)
あんまり楽しそうで、一瞬声をかけるのを忘れて見惚れていると、さっきも聞こえていた歌の歌詞が聞こえました。

♪Movin' to the country, Gonna eat a lot of peaches
♪Movin' to the country, Gonna eat me a lot of peaches

サビの部分なのか、学校の先生が聞いたら泣いちゃうような田舎英語(?)のフレーズを、南部の人のようなアクセントで繰り返し熱唱していて、私が思わず笑ったら、2人一緒に振り返りました。

「ママー ピーチなの。 お腹すいたから。 これだったらベイビーも大丈夫なんだよ (^▽^)」
「お風呂はちゃんと入ったけど、パジャマがどこか分からなくて… (^^;」

晩ご飯が足りなかったのか、ただ寝たくなかったのか。 やりたくないことをごまかす時に娘がよく使ういいわけは、その頃「お腹がすいた~」でした。 夫はそれにまんまと引っかかったようで、 2人で歌いながら、その日の昼間もらって冷蔵庫に入ってた季節外れの桃を切っていたのでした。

大きな肉切り包丁を持って、お肉用のまな板の上で肘までベトベトにしながら、桃を切り刻んでいる娘の姿は、つっこみどころ満載でしたが、振り返った2人の笑顔は明るく穏やかで、私がそれまで夫にグチろうかと思っていたイヤなおじさんの話もすっかり頭から消えていました。 
もうすぐ日付が変わってしまうような時間だったけど、みんなでテーブルを囲んでその桃を食べました。 

自分のたてた計画通りにコトが運ばなかったり、子供が言うこと聞かなかったり、疲れている時に散らかった部屋を見て、いつもイライラ機嫌悪くなってしまうのは、私の方だった。 
夫ののんびりマイペースにはよくウンザリしまうけど、そんな夫に大切なことをまた教えてもらったような気がして、今も私の中に鮮明に残っている情景の一つです。



2人がその時していることのテーマにあまりにもピッタリの桃の歌だったので、勝手に作った歌かな~と思っていたら、夫が昔好きだった、実在する歌(笑)だと分かりました。 
たまたま夫が歌詞を覚えている部分だけ口ずさんでいたら、娘が真似して歌いだしたようでした。 それが何だか私と娘にはいつまでも頭の中に残って、聴いたこともないのにずっとそこだけ娘と一緒に歌っていたら、数日後、クローゼットの奥のもう聴かなくなった古いCDの中から、夫がそのCDを探し出してきてくれました。

”Peaches”  by Presidents of the United States of America


改めて聞くとなんでもない歌詞なんだけど、私にはかえって「辛いことがあっても負けないで~」と、励ましの言葉を直接語りかけてくる歌よりも、自然に心に沁みてくるのです。 
広い桃果樹園の隅の木陰で寝転がって、麦藁帽子で顔を覆ったまま昼寝をしている…そんな光景を思い浮かばせてくれるこの歌は、「そのうち、どうにかなるかぁ…」っていう気持ちにさせてくれます。 4年ほど前、何の縁もない、希望先とも全然違うこの土地に引っ越すことが決まったと聞いてガックリきてた時も、この歌が娘バージョンで頭に流れました。





そして、引っ越してきたこの土地が、桃の産地だったというオマケつきw
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マイナーな曲なのに、今は5歳の息子たちまで歌ってます。^^
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by 4x4T | 2005-08-22 04:03 | 独り言
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